年金の損得勘定 その2

 年金を受け取るに際して損得勘定はすべきでないと申し上げましたが、これはあくまで受け取る側の考え方です。

 以前、厚労省のHPに「年金は払うだけ損だ」といった意見に対して同省の回答が書かれていましたが、その内容が「年金は起こりうるリスクに社会全体で備え、皆さんに安心を提供するものです。そのため経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません」というものでした。

 私の知る限り厚労省では、年金保険料を払いたくない人を説得する際に、将来的には払った分より多く戻ってくるので得であるといった趣旨の説明をしていたように思いますが、いつから損得勘定ではなくなったのでしょう。加えて老齢基礎年金についていえばその支給額が生活保護を下回っているばかりか、生活保護なら医療費も免除されていますから、基礎年金のみの人の立場からすればこの状況のどこが『安心』なのか全くわかりません。

 また会社員は厚生年金には加入が義務付けられており、年金保険料を払うか否かの選択権は認められていません。強制的に加入させられた上に、年金保険料を絞れるだけ絞り取った後は、老後生活を保障するなどとはどこにもうたっていないからこの先は自助努力で、という厚労省が何をもって『安心』と言っているのでしょうか。こんなことでは多くの人が感じている年金保険料を納めても損にしかならないということに私も同調せざるを得ません。

 私は年金というのは長生きの保険と考えて保険料を納めてきましたし、現在はその給付を受けています。従って私自身は損得勘定を持ち込むつもりはありません。しかし厚労省が「経済的な損得という視点で見ることは、本来適切ではありません」と言うのはあまりにも不適格な回答です。給与や賞与から決まった額を納めている人にとっては、納めた額に見合った年金が受け取れるかどうかが最も肝心なことで、そこには損得勘定があるのが当然です。

 この回答では少なくとも得にはならないと言っているようなものです。本来回答すべきなのは、例えば年金保険料を自分で投資信託等を利用して運用した場合と年金機構で運用した場合の比較を行い、その結果年金の方が有利であるとわかる内容などの年金の優位性です。厚労省が匙を投げた今、年金制度への国民の不信感はさらに強くなっていく一方でしょう。