『今回の検証結果を踏まえれば、公的年金制度の持続可能性が確保されていることが改めて確認できたと私は思います』
ちょっと古いですが2024年に行われた5年に一度の年金財政検証の結果を受けて時の厚生労働大臣はこのように述べました。試算結果を見る限りでは、最も経済成長が低くかつ労働参加者(厚生年金保険料の支払いを行う労働者)が今と変わらない場合以外のケースでは、国が最低保証としている所得代替率の50%を上回っている結果となっています。
また現在でも労働参加者は増加傾向にあり、事業所の規模による制限もなくなる可能性が高く、パート・アルバイトの方や高齢者でも厚生年金への加入が可能になるケースが増え、その結果年金保険料の納付額も増大することが期待できます。
とは言えそもそもここに挙げた所得代替率というのは、
夫婦2人の基礎年金 + 夫の厚生年金/ 現役男子の平均手取り収入額
という式で計算したものであり、その数値が50%を上回るというのは言い換えると、年金生活者は現役世代の収入の半分しか年金を受け取れないということです。従ってこの検証で年金制度の持続性は確認できたかもしれませんが、年金のみで生活していくことはかなり難しいと言っているようにも見えます。多くの人にとって制度の持続性も大事ですが、それよりも年金で生活していけるかどうかが最大の関心であり、その点には何も答えていないように思えます。
当時この結果を受けて、タレントのパトリックハーランさんがあるTV番組で『国によって計算式が違うんですけど、貧困線というものがあって、平均収入の半額ぐらいが貧困線とよくいわれます。年金暮らしが事実上の貧困と(所得代替率の)計算式でなっているんですよ』とコメントしていました。実際に現行の基礎年金だけではまさしく貧困の状況であり、また令和5年度の男性の厚生年金(基礎年金を含む)受給額の平均は166,000円程度で、税、社会保険料を控除するとほぼ生活保護と変わらない金額になります。まさしく事実上の貧困なのです。
また所得代替率の計算に用いている現役男子の平均手取り収入額を37万円としている根拠は示されていませんし、モデルとした家庭の平均所得にしても賞与込みで生涯の平均月収が43.9万円というのは高すぎるように思います。これらの数字の根拠が示されないと見ようによっては都合のいい数字になるように細工した結果ととられても不思議ではありません。
いずれにしろこれらから推し量るにこの財政検証の結果として、現役世代に対しては「年金は確保されています。だから今後も国の制度に従って納めてください」と、一方年金受給世代に対しては「今後の年金は減っていくので貯蓄や投資、または勤労といった準備をしないと最低限の生活も難しくなります」と伝えることで、国の政策は間違っていないのだと突きつけた格好のものに思えます。
年金財政の検証は現状では知りえない未来の状況を想定して行うため、一つ一つの数字の正確さを求めるのは酷であるし、現状では想定できない事象が将来発生することだって十分にあり得るためあくまで一つの参考ですが、しかしながらそこに国民が豊かに老後を過ごす将来像が浮かんでいないとしたら、こんな机上の検証をする意味はゼロという他ありません。