年金の損得勘定

 ネットを見ていると年金の受取額が生活するのに十分でないという声がよく取り上げられています。その場合には年金の受け取り時期を繰り下げることによって増額する方法が案内されており、さらにそのためにはできるだけ長く働いた方がいいと付け加えられています。確かに繰り下げを使うと最大で84%程度年金が増やせるので出来るだけ長く働いて、公的年金の受け取りを先延ばしするのは一つの考え方です。

 その一方で75歳まで受け取りを延ばした場合、男性であればいわゆる平均寿命まで約6年となり、仮に平均寿命までの命だとすると年金の受け取り期間がかなり短くなってしまい、65歳から受給した場合と比べて生涯での年金受給総額が少なくなってしまう場合もあります。

 そのため多くの人が「いつから受け取るのが一番得なのか」ということを真剣に考えているようです。またそうした試算に基づいて何歳まで生きたら損しなかったことになるのかをシミュレーションしてみる人もいるようです。

 確かに年金は老後の生活の支えですが、私は損得で考えるのはいかがなものかと思っています。私は前にも記載のとおり老後の生活は年金で賄うことを基本スタンスとしています。そのために受給が開始になる前から自分と家内の年金の見込額を調べて、その約85%が手元に来るものとして計算し、算出された金額の範囲で生活していける状態かどうかをしっかりと検証してきたからです。今後支給額の逓減や物価上昇による調整を余儀なくされることでしょうが、それらもある程度見込んで別途年金資金も用意しています。

 それ故に年金を受け取るに際しての損得勘定は全くありません。そこには公的年金はあくまで長生きした場合の保険であるという考えがあり、仮に貯蓄がなくても最低限の生活はできるものという理解をしているからです。最初から年金の範囲で生活をすることができれば長生きすることに対する不安はかなり小さくできるはずです。

 もちろんそれでも不安がなくなるわけではありません。しかし現在起こっていないことに対して過度に不安を感じて対策をしても、結局また新たな不安が出てくるだけでキリがないことです。

 自分の寿命はわからないのですから年金の損得勘定などしてみたところでそのとおりに物事が進むわけではありません。また結果として得な勘定になったところでそれで喜べる感覚も理解できません、もうすぐあの世へ旅立つというのに。あまりつまらない損得に毒されず、年金は長生きに対する保険と割り切ってまず今この一瞬を大切に生きた方がいいのではないでしょうか。